戦争と北朝鮮

2006年10月10日
このところよく書いていることなのですが、戦争とは外交の一環です。
ですから、世界広しと言えどもいきなり戦争を仕掛けるような単細胞な国家元首はいません。(昔、サッカーの結果で戦争になったことはありましたが)
ブッシュ大統領とアメリカの軍産複合体を戦争屋と揶揄する人もいるでしょうが、彼らとてさしたる大儀もなく無理に戦争を仕掛けることは難しい状況にあります。
(先のイラク戦争についてはブッシュ大統領の強権により行われた部分もありますが、そもそもの話としてそれまでの間にフセイン元大統領を排除してこなかった国際情勢のほうがよっぽど異常と言っていいでしょう)
本当の意味での死の商人であれば、アフリカなどの情勢が怪しい国での内戦を引き起こしてやったほうが何ぼか簡単です。


で、今回の北朝鮮の状況なのですが、これがなんとも難しいところにあります。
先のフセイン氏が行ったクウェート侵攻やクルド人の大量虐殺に近い行為は北朝鮮にもありますが、これが半世紀も前のことであったり詳細が国外に漏れてこない為に戦争に踏み切る理由としては弱すぎます。
また、ここ最近の核実験や弾道ミサイルのことを理由とするにも、パキスタンやインドといった前例があるだけにその2国の体面も考えるとあまりよろしくないです。
つまるところ、戦争により金正日を国際社会から退席させるには少々押しが足りないのが現状です。
しかし、アメリカとしても核を保有する敵対国の出現は歓迎するところではないですし、最も身近な日本としては容認するようなことは絶対にありえません。

「自国の権益を脅かし、またいずれの国も仲裁しない(できない)場合」

という状況が形成されつつあるのは間違いありません。

一方で、北朝鮮としても同様のことが言えます。
北朝鮮の経済は金融制裁により大打撃を受けており、これの早期解除が成されなければ金王朝の崩壊は火を見るよりも明らかな情勢なのです。
《核》という最強クラスの外交カードを切ってきたこともこのことを裏付けています。

アメリカの譲歩が得られないのであれば、最後の外交カードに手を伸ばすことも考えなければならないのですが、これは勝ち目が0なので普通は選択肢には入ってきません。
しかし、ここが独裁国家の悲しいところ。最後の手段に出ずに軍門に下ることは絶対にありえません。
自らの身柄の安全を確保しなければ下ったところで破滅を待つだけですし、そもそもの話として降伏しようとすれば間違いなくクーデターが発生します。
つまりは毅然とした態度をとり続け、周りに弱みを見せないで対決姿勢を強めていくしかないのです。

戦争を仕掛けたいが仕掛けられないアメリカと、戦争を回避したいものの戦争に向かって突き進むしかない北朝鮮。
なんとも皮肉なものですな。

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